コロナ対策の助成金として、雇用調整助成金は使えるのか?
この記事は雇用調整助成金について分かりやすくまとめました。参考にしてください。
雇用調整助成金について、巷の声は、わかりにくい、わからない、申し込みしても受けられない、もらえない、などなど・・・
そもそも雇用調整助成金とはどのような制度かというと、昭和50年に雇用調整給付金として、不況期に無理に雇用を維持せず、働く意思と能力のある従業員の休業とスキルアップのための教育訓練などに対して国が企業や事業主に対して経済的支援を行うことを目的に創設されました。
つまり、新型コロナウイルス対策として制度が作られたわけではなく、新型コロナ対策として特例として制度改正を行っている状況なので、制度の本質は、そう簡単に受給できない・受給させない、そのような制度設計になっています。
その申請手続きは、嫌がらせだと感じるほど・・・ 高く厚い壁があります。
根性や忍耐だけで乗り越えることもできません。
「法定三帳簿」と聞いて・・・何それ?
という場合は、受給できない可能性が非常に高いと考えてください。
雇用調整助成金とは?
雇用調整助成金とは? | ポイント |
①事業活動の縮小を余儀なくされた事業主であって、 | 売上等(生産指標)が下がっていること |
②労働者の雇用を維持する仕組み(雇用調整)をしたものに、 | 休業中の社員に休業手当を支給していること |
③労働者に支払った休業手当に対する助成金援助を国が企業や事業主に行うもの | 企業や事業主が申請を行い、助成金を受け取ります |
雇用調整助成金の計算方法
新型コロナウイルスの影響で営業を自粛し、従業員5名を20日間休ませた場合の計算例です。
計算の前提として、
前年の平均給与を日給換算して15,000円、休業手当の支給割合を60%と仮定します。
従来の雇用調整助成金は、67%が助成されます。
(15,000円×60%)×67%=6,030円(ここの、上限は8,330円)
5名×6,000円×20日=600,000円(これが、これまでの雇用調整助成金です)
緊急対応期間中の受給額!
緊急対応期間は、4月1日~6月30日です。
新型コロナウイルスの特例では、雇用調整助成金は、80%(解雇を行わず雇用を維持した場合は90%)が助成されます。
(15,000円×60%)×80%=7,200円
5名×7,200円×20日=720,000円(これが、コロナ特例の雇用調整助成金です)
注意!
雇用調整助成金は、昨年の給与支払実績に基づいて平均給与の日額を算出して計算します。従業員それぞれに実際に支払った給与額を基準としていません。
雇用調整助成金=720,000円(平均給与日額から算出した額)
実際に支払った休業手当=900,000円(会社負担=180,000円)
従業員①:(20,000×60%)×20日=240,000円
従業員②:(18,000×60%)×20日=216,000円
従業員③:(15,000×60%)×20日=180,000円
従業員④:(12,000×60%)×20日=144,000円
従業員⑤:(10,000×60%)×20日=120,000円
休業手当を100%支払った場合=1,500,000円(会社負担=780,000円)
従業員①:20,000×20日=400,000円
従業員②:18,000×20日=360,000円
従業員③:15,000×20日=300,000円
従業員④:12,000×20日=240,000円
従業員⑤:10,000×20日=200,000円
※助成率など、制度の改正は頻繁に行われることが予想されます。
コロナ特例で、雇用保険の未加入者も対象に!
雇用保険の未加入者の場合は、緊急雇用助成金として申請します。
受給額の計算式は次のようになります。
5名×4,800円×20日=480,000円(雇用保険未加入者の雇用調整助成金)
1人あたりの休業手当支給平均額(支給した休業手当額÷人数)×助成割合
従業員①:8,000円
従業員②:7,000円
従業員③:6,000円
従業員④:5,000円
従業員⑤:4,000円
30,000円(支給した休業手当額)÷5人=6,000円×80%(又は90%)=4,800円
雇用調整助成金の緩和された支給要件とは?
1月24日~
緩和された支給要件(コロナ特例) | ポイント |
雇用量増加要件の撤廃! | 雇用保険被保険者数が前年より増加していてもOK |
事業所設置後1年以上要件が撤廃! | 売上比較は、令和1年12月度対比で行います |
計画届を後出し可能に! | 既に実施している休業等につき、6月30日まで |
残業相殺の停止! | 稼働日に残業があっても、助成金の減額は無し |
新卒採用者も助成の対象に! | 被保険者期間6カ月以上要件が撤廃 |
短時間休業のローテーションも可能! | 短時間休業は一斉に実施する必要がある要件が撤廃 |
4月1日~
緩和された支給要件(コロナ特例) | ポイント |
支給割合の拡充! | 4月1日以降開始の休業に対して80%または90% |
売上高が前年同期比5%以上ダウン! | 前年同月(1ヶ月)対比。1/24~3/31は10%ダウン |
雇用保険未加入者も受給対象に! | 受給額の計算方法が異なるため注意、緊急雇用助成金として申請 |
支給限度日数が別カウント! | (年間上限100日)+(4月1日~6月30日) |
教育訓練加算の拡充! | プラスアルファで支給、在宅からの研修参加もOK |
雇用調整助成金のよくある勘違い!
雇用調整助成金の申請方法とは?
申請手順
1.休業計画を作成し、労使協定を締結します。
従来は、計画書を事前にハローワークへ提出し、休業を実施しますが、コロナ特例で計画書の事後申請がOKとなりました。
休業シフトのヒント!
- 全社の営業を停止して、全社員が一定期間の休業を行う。
- 縮小営業として、全社員がローテーションで休業を行う。
- 縮小営業として、一定の社員が、一定期間の休業を行う。
- 曜日限定で営業と営業停止を行う。
2.休業を実施します。
休業手当の支給割合はどうする?
労働基準法のルールと同等以上が求められます。
労基法ルール=直近3ヶ月間に支払った賃金総額÷3ヶ月総暦日日数×60%
つまり、60%以上です。
3.支給申請を行います。
休業終了後に、申請を行います。同時に休業計画書を提出します。(コロナ特例)
4.労働局の審査が完了した後、支給されます。
雇用調整助成金の必要書類は?
日頃の労務管理が適正に行われていれば、難しい書類ではありません。
コロナ特例で緩和措置が講じられ、記載事項は従前の半分くらいまで簡素化されましたが、34ページほどあります。
主な添付書類
- 売上が5%下がったことを証明する書類
- 休業協定書(コロナ特例で全従業員の署名が不要になりました)
- 休業計画一覧表(事後提出の場合は、休業実績一覧表)
教育訓練加算金の活用について
コロナ休業で社員を休ませている間に、教育訓練を行うとプラスアルファで加算金がもらえます。
社員は休業ではなく、仕事の一環として教育訓練を受けるので、賃金は100%支払います。
前年の平均給与が、日給換算して15,000円だった場合は、次のようになります。
(15,000円×100%)×80%(又は90%)=12,000円
上限は8,330円なので、
8,330円+2,400円(教育訓練加算金)=10,730円が助成されます。
5名×10,730円×20日=1,073,000円(教育訓練加算)
5名×7,200円×20日=720,000円(コロナ特例の雇用調整助成金)
教育訓練加算として、353,000円のプラスとなります。
4月1日から緩和された支給要件は?
- 管理職研修など、従来から実施すべき研修も対象になりました。
- (半日研修+半日在宅勤務)も可能になりました。
- 自宅からのオンライン参加も対象になりました。
まとめ
雇用調整助成金は、助成率のアップや、オンライン申請への対応など、時々刻々と目まぐるしく更新されています。